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89回公演
福井県福井市
ビストロ後藤

 その日は台風15号の影響で、昼から小雨模様。集まってくださったのは男性4名、女性19名、お店のスタッフ4名を含め計27名、そしてプラス1は天国の後藤栄治さん。
 二度目の今回は、厨房を背に、朗読の椅子を配置。これは、彼が料理に打ち込んだ厨房をライトアップし、再び後藤さんを思い出してもらおうという思惑からです。
 6時の開場に先立ち、5時より仕込みを開始。今回は、私の額に出る、あのおぞましい10円影を抹殺するために購入した新兵器を用意。杪谷のライティングテストが執拗に繰り返され、あまりの熱心さに感動しながら“この気持ちで、最後まで細心の注意を払ってくれたらなあ”と嘆き節の私。気合いが入った仕込みを終え、私はお店の入り口付近のスペースにスタンバイ。6時少し前には開場しました。雨にも拘わらず、客足は順調、5分前にはほぼ全員が・・・と思ったら、今回の特別ゲストが現れない。杪谷が少し遅れることを説明し、待つこと10分。電話も繋がらない。「まだ、見えないんだけど・・・」と杪谷。「始めて下さい」と私。客電が消され、蝋燭の明かりに。さらにジョン・タバナーの「挽歌」が約一分。暗転の中、後ろより厨房目指して・・・。
 今回のテーマは、“ゆっくりと、シンプルに。お茶漬けのりは控えめに、お茶漬けサラサラ「スローライフ計画」”これは、前日練習した時の感触を得て、最近の朗読の流れ、感情の入れ方、持って行き方、音程のつながりをチェック。その結果、こちらから物語を作らず、観客にゆだねる「スローライフ計画」が生まれたのです。“さあ、いくぞ”。ところが杪谷のオペレート付近が明るい。“あ〜残念、これが文明の明かりなんだな〜”と思いつつ歩く。いよいよ、私の正面上方より、新兵器のスポット照明が点灯!と思いきや暫く暗転のまま。“何だこりゃ”の時間の中、漸く明かりが・・・。ということで、今回は両横のライトに加え、正面から悪しき10円影を消すライトが活躍。おかげで見事10円影は消滅したのです。これに気をよくして、スポットの明かりを観客と見なし読み始めました。ところが暫くして一番前の女性に咳が出始める。「あ〜耐えていますね、今、間を作りますから我慢してないで、思いっきり咳をして下さいよ。もうすぐですから。さあ、どうぞ」と心の声で促したのですが、女性は“がまん、がまん”。我慢から来る咳のあと、遂に席を立たれて、後方へ。一番前でしっかり朗読を聞こうと思っていたのでしょう
が・・・残念でした。この後は何事もなく読み進み「スローライフ計画」は順調に推移しました。
 ライトアップの最初と最後に照らし出されたのは、厨房の戸棚の上方に置かれた「後藤栄治のコック帽」ここにいたのです、我らの後藤栄治が・・・。朗読の後、杪谷が挨拶。途中、声が詰まって言葉にならない。“あ〜いい奴だなぁ”と思わず私。こんな感激の後、朗読より嬉しいフランス料理の登場。ワインが出され、皆さんご満悦の様子。
 6時30分にスタートした朗読会、お開きになったのは何と5時間後。27プラス1の思いが一つになった証でしょうか?。後藤栄治さん、ありがとう!
 実は特別ゲストとは今年の「今立現代美術紙展」で準大賞を受賞された、どんぐり制作の松本三重子さんだったのです。この日は熱を出して唸っていたそうです、残念でした。
 因みに受賞作品のタイトルは「どんぐり生産工場」ブフィエも喜んだとさ。私もね。