TOP>公演レポート>レポート24
75回公演
名古屋市緑区
正文館潮見が丘店
昨年の3月21日に名古屋市の東区本店と潮見が丘店で開催していただきましたが、今回は潮見が丘店が単独で開催してくださいました。
4月12日土曜日は、朝から雨模様で、その雨も時折激しく降るといった生憎の天候でした。今回も店内の左奥にあるカルチャースクエアという空間でした。この空間は40人も入れば一杯という小さなスペース、ゆったり聞いていただきたいというイベント担当の各務貴子さんの思いもあって、30人限定でお客さんを募集しました。 前回、14人とやや少なかったこともあり、今回の各務さんの気合の入れ方はひと味違い“おっと”と思わすものがありました。おかげで当日の聞き手の方はは26人(内男性9人)でした。
朗読の空間はコンクリート壁とお店を仕切る間仕切り扉で囲まれ、お店の外に通じる扉が一つありました。
ここでの声の拡がりは非常に良く、小さな声でも充分聞こえます。今回もこの条件を生かすことにしました。
開演は3時。店内のスピーカーからはお客さんへの呼び掛けと、開場した旨のアナウンスが流れ、店内が朗読空間になってきた感じがしました。こんな所にも多くの方に聞いていただきたいという気持ちを感じました。
入り口が一カ所ということもあって、担当の各務さんが挨拶をされている間に私はサッと忍びの者のごとく会場に入りました(お見事という声はありませんでしたが)。
定時に始まった朗読、ゆっくりと声も抑えていこうと予め決めていましたので、そのイメージで語り始めました。椅子に座り、読み進める内に、間仕切りの向こうの店内から子供達の声や、話し声が聞こえてくるのです。“そうか、店内にお客さんがいるんだ、間仕切りの向こうでは本屋さんの日常があるのか”などと思っている内に聞こえてくる声も心持ち大きくなったようで、これは対処方法を考えねばと思い始めました。つまり、ゆっくりとしかも間を取って朗読をしていると、間の時に隣の日常の声が挟まって来るのです。そうすると耳をトキトキに澄ました聞き手の方たちの耳に声が進入して、逆に朗読に集中出来なくなるのではと思い、「この人といると心が落ち着く」のくだりで一息ついた後は、テンポを上げ、間を余り取らないで、物語に乗って貰えるように進めていきました。途中で気持ちよく寝ている前列右手の方が、ちらしを落とされて私の足下にひらっと舞ってきました。「おじさん、私はちらしは要りませんよ」。あとはテンポに気をつけて最後まで読み進め、エンヤの曲が入ったところで、外への扉を開けました。そこには3時40分過ぎの小公園が見え、篠つく雨の中に木々が雨を身体に受けて、重そうに風に揺れていました。終了後、杪谷が少し解説を。「この扉からは、どの席に座られていても小公園の木が見えます。でもご覧になっている木は、それぞれ座られている位置によって違っているかも知れません。扉の向こうにある木を一生懸命見ようとされた姿に、この40分間の朗読があったような気がします。」彼のこんなおしゃれな言葉が印象に残りました。感想はその場でお聴きすることは出来ませんでしたが、片づけている頃に一人の男性が戻ってこられ、「大変興味深く聞かせていただいた。久し振りに集中した感じです。医療に携わりながらも、これで良いのか、こんな空虚な診療で患者さんを癒すことが出来るのかと自問していたのですが、今回の朗読を聞かせていただいて、想いをしっかり持って医療に従事する勇気をもらいました」と、話を聞かせて下さいました。実はこの方は私の亡き父の主治医だった方です。桜の花が散りつつある春の日のこんな感じの朗読会でした。
76回公演
岐阜市
「川原町屋」
劇団の公演で、暫く中断していた朗読会を再開しました。5月30日通算73回目は、何度も主催してくださっている沢田信子さんのご協力。場所は岐阜。長良川の鵜飼いが行われている乗船所近く。昔の町屋をギャラリー&カフェにされている「川原町屋」でした。お店のオーナー安藤さんのご協力もあり、実現しました。
間口の狭いお店をかなり奥まで入っていくと、中庭を隔てて立派な蔵が見えてきます。蔵は木材を張り改装され一階が喫茶、二階が作品を展示できるフリースペースとなっていました。
今回はその蔵を朗読会場とし35脚の椅子をしつらえました。会場づくりから参加し、どのように聞いていただくか、配置にも気を使いました。二階に上がる階段があり、そのあたりを朗読スペースと決めました。
7時開場と同時にお客さんが入り始め、7時30分過ぎには男性1人を含む35人の方が揃いました。蔵の重い扉を閉めると中は真っ暗。「よし、今回は漆黒の闇からスタートだ」と気合い充分。蔵の奥、上方にある1メートル四方の窓を予め塞いでおいたにもかかわらず、何としたことか本番直前にその黒幕が「ドサッ」と落下。なんとも不運な出来事。全く何のための黒幕かしらん。
朗読の始まりを告げる曲が掛かっても、ビニール袋をがさがささせる方がいて、お客さんが集中できないようでした。漸く曲が終わり、朗読のスタート。二階より暗がりを降り、階段の中段あたりで座り、呼吸を整え、身体から溢れる言葉を待ちました。そして天の声よろしく(そう思ったのは本人だけかも)「ある人が並はずれた・・・」ゆっくり降りながら台詞を語りました。その後、階段を降りたところに座り、朗読を開始。木に包まれた蔵の空間は密度が濃く、言葉もしっくり空間に馴染みそうでしたので、ゆっくり読み進めました。しかし半分ほど読み進めた時に、またまたあの「がさがさ」とビニール袋をさわる音。さらに上空には飛行機の音が・・・。それらをやり過ごして読んでいくと、今度は一番前の赤いスーツの女性が鼻をグスグスとやり始め、よくよく見るとどうやら泣いていらっしゃるのです。「そうか、そんなにこの作品に感動されたのか、これは凄いことだなあ」と思いながら、こちらも何だかそんな気になりそうで「これはいけない、いけない、この作品は泣く作品ではないぞ」と、奮起一番その女性に向かって「これは泣ける作品ではありませんよ、自分に問いかけるのですよ」と言う気持ちを込めて、新たに語り始めました。ここからは少しテンポを上げて読み進めました。エンディングを迎え、もしかしたら掛からないのではと思いながらも最後の言葉をゆっくりとかみしめるように語っていくと遅蒔きながらエンヤさんの登場、その歌声を聞きながら蔵の扉をここぞとばかりに勢いよく開けました。すると、何とズバンと凄い音がして扉が開き、今までの静けさが一気に“おじゃん”。おかげで、この音を聞いて“ウワァ”と声をあげる方もいらしたほど。内心愕然としながら、玄関先まで歩き続けました。私が中庭を抜けるとき、横に植わった垣根がライトアップされ、さらに私が玄関に消えた時に野点用の和製の大きな紅傘にライトが点くはず・・・点きませんでした、失敗です。その後ワインなど飲み物が配られました。