47回公演
名古屋市
竹田嘉兵衛商店 |
私の住む名古屋市緑区で朗読会をやらせていただきました。
有松は有松絞りで全国的に有名な所。その絞りを中心にいにしえより商いをされているのが竹田商店です。そこをお借りしてパッチワークの作品展を開催されたのがグループ名「なかま」の4人の皆様です。メンバーの清水輝子さんが、絞り作家下村訓子さんと親しく、今回の作品展で何かイベントを企画したいと言うご相談を受け、実現しました。
会場の辺りは文化財指定地区となっており、竹田嘉兵衛商店も250年以上続く老舗、商店の離れに茶室「裁松庵」と控えの座敷があり、その座敷の方で6時より朗読会をさせていただきました。6時開始にしたのは集まられる方が主婦の方が多いだろうとの予測からです。ところが主婦の方もこの時間は意外と忙しく、思ったほど集客できなかったようですが、それでも女性20人、男性2人の22人の方が集まってくださいました。
茶室の脇にある畳座敷は、広さ20畳ほどの空間で縁側があり庭に面していました。
この庭は、こぢんまりとした苔むした日本庭園で中程には石灯籠も置かれ、時の移ろいを感じさせてくれる佇まいをもっていました。
秋も深まり少し寒いかなとも思いましたが、庭と座敷を隔てる障子をはずし、その庭を背に椅子を置きました。
残念ながら6時でもあり、さらに満月に近い夜もあってか漆黒の闇にならず薄暮の中での朗読となりました。読み進む内に次第に夜の帳がおり、朗読も部屋の雰囲気に馴染んでいるなと思った矢先、なんと22人の中のおひとりの携帯電話がけたたましく鳴り渡ったのです。それもあろうことか最前列で。私はまず朗読のテンポを落とし間を取り、鳴りやむのを待ちました。音が止んだところで再びスタート・・・と思いきやまたもや“ハイ!朗読やめ”とばかりに再び携帯の音が高々と鳴り響きました。またもや最前列の同じ電話でした。今度も慌てふためいて消してくれましたが、お客さんも私もテンションが下がり、暫くの間、沈黙、その後思い直して再び朗読を進めました。
ほんの一音で、拡がりはじめたイメージは見事に弾けてしまうものなんですね。そこまでデリケートな処に、それぞれの思いを置いていらっしゃったのだなと空間を通して感じました。ハンデイを背負った後半は前回と同じくテンポを少し上げ、情感を出すように、そして丁寧に朗読をしました。最後はエンヤの曲の中、勿論納得の庭園のライトアップ。屋根から延びた庇にも光が当たり、百年を経た木の質感があぶりだされ、その庇の下には見事に紅葉した低木の木々、さらにその奥には苔むした緑の絨毯とすっくと立った木達、これらが見事にマッチして得も言われぬ美しさを醸し出していました。この光景で、皆さんの気持ちはそれこそ昇華したといっても過言ではないかも知れません。
感想として、皆さん庭の美しさを挙げていました。それとこの家屋の持つ佇まいを感じ取ったようです。
47回の朗読をこなしてきて、読む事への恐怖、疑問がでて来たように思います。読み重ねてきたことは何だったのか。朗読をするとはどういうことなのか、読み手のポジションはどこに置くのかなど様々なことが浮遊し始めました。私には良い兆候だと思います。このあと一つずつ答えを見つけていこうかなと思っています |
48回公演
名古屋市
ギャラリー冬青(そよご) |
ギャラリー冬青は名古屋市守山区にある木々に囲まれた自然豊かな場所。ご自宅は木をふんだんに使った二階建ての家屋で、真ん中にウッドデッキを挟んでギャラリーがあります。伊藤さんご夫妻が運営されています。
3ヶ月前より30名限定でこの朗読会が組まれ、当日は女性21人、男性2人の計23人の方が集まられました。
会場の空間は伊藤さんご夫妻の自宅リビングを利用して行いました。広さは一階部分がフローリング15畳ぐらい、中二階が畳敷き10畳ほど、その一階の部分には巻きストーブが置かれ、木のぬくもりに囲まれた、まさにゆったりとくつろげる贅沢な空間になっていました。ストーブの横に椅子を置き、上手にはウッドデッキに通じるガラス戸、下手には手すりを持つ中二階と言う具合で始めることとしました。
自然が育んだ雑木林に建てられたギャラリー兼ご自宅は、近くには小川が流れ、ときどきその存在を鼓舞するような水の音が聞こえてくる場所。そんな環境の中、7時に朗読を開始、遅れる方もなく私は中二階の階段を挟んで右にしつらえられている3畳ほどの和室の書斎から登場、気持ちゆったりめに始めました。23人の方の息を殺した視線に見つめられ(暗めなので本当は見えないが)、読みに2度ほど危ういところがありましたが終始ペースはゆったりと、そのゆったりの分メリハリをつけました。始まる前心配した伊藤さんちの犬たちも朗読のルールを守り、吠えて邪魔することもなくラストへ。エンヤの曲の中、ガラス戸の向こうの木々がライトアップ、さらに下手の中二階の窓にもライトを仕込み外から光が差込むようにしました。
観客の皆さんはラストの上手、下手のライトアップにうっとりされたようで、終了してからも映し出された美しさに盛んに感嘆の声をあげて褒め称えていました。
自然が味方してくれた今回の朗読会、私よりお客さんの方がその恩恵を受けたようでした。感想としては以前に聞いてくださった方が、今回の方が、距離的なことやご自身二度目という事もあり、すんなり入ることが出来たとのことでした。
ご協力いただいた伊藤さんご夫妻も、空間がこんなにイメージを拡げるものかと再度ギャラリーを取り巻く環境を認識されていました。
このところ連続でご協力下さっている下村さんから、朗読の仕方が変化してきているが意識的なのかという質問がでました。私としては50回近く語ってきて、初めのうちは朗読がどのようにつたわっているのか分からず、手探りで自分の思い描いた朗読スタイル、ペースを半ば一方的に貫いてきました。ところがそのうちに聞き手との呼吸を感じない事には聞き手の求める作品の深層へは届かないのではないかと思い始めました。そしてまず空間、さらにそこから生じる聞き手の作品へのアプローチの仕方などをなるべく開演前に雰囲気から捉える様に努めてきました。そんなこんなで、回を重ねることによって語りが変化し、少しづつ聞き手に近寄った感じになってきたのだと思います。ただ変化することによって、また変化させることにより私自身、語る事への深奥が見えてくるのではないかとも思っているのです。 |
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