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38回公演
名古屋市
不二パークホテル
何と“国語の先生の前で朗読”と、とんでも無いことになってしまいました。この朗読を始める前にはこんなことは予想だにしていませんでした。このお話が私の知り合いのフリーアナウンサー犬飼直子さんよりあったとき、実を言えばちょっと躊躇しました。とはいえ、38回の朗読をする間に、何人かの教諭もいらしたわけだからと自分を納得させながら引き受けることになりました。
 この「朗読の会」という組織は名古屋市内の国語の先生方が、朗読を通して親睦を深めるとともに、学校教育にも生かそうと始められたものです。その朗読会の講師として、数年前から携わっていらっしゃるのが、元アナウンサーで現在はフリーでご活躍される犬飼さんなのです。その記念公演に呼ばれて朗読をさせていただくことになったのです。
 当日の会場は、朗読にもっともふさわしくないだろなと思われるホテルのバンケット「ビルゴ」という宴会場。それは瀟洒でモダンな雰囲気の長方形の空間で、シャンデリアがぶらさがり、円卓テーブルが8つ程入るスペースといえば良いでしょうか。そして空間の壁際に、料理が並べられると言う案配。こんなハンディの中?奥に朗読用のイスを置き燭台を立てました。すでに我々の準備の前、5時30分より先生達の朗読発表が行われていました。これはこれで味のある朗読と言えば良いのでしょうか。しかしこれを聞かせていただき勇気凛々、29人の先生を前に「ようし、やるぞう〜」とむくむく気持ちが盛り上がってきました、これは事実です。
何とか無事に何者にも時間を占拠されることもなく終了しました。その後朗読の会の方たちのパーティが続けられしばらく歓談。その間に、先生方が私の元にお見えになり、感想を述べられました。「森の大きさ、偉大さがしっかりと伝わってきました」「会場の空間が暗闇になったとき、何かが動いたような感じがした。」「どうしてあのような間を作れるのか」そのほか、実際に子供達に3ヶ月を費やし、給食の時間に読んで聞かせているという方もお見えになり、本のストーリーが人をひきつける魅力を持っているのだということを語る方もいらっしゃいました。
今回は犬飼さんのご友人で、やはり女性アナウンサーの方もお見えになり、評判になっているこの朗読(これは私が言ったのではありませんよ)を一度聞きたかったとおしゃって下さり、今度愛知県の春日井市の方でも企画したいとのことでした。うれしい話が持ち上がったところでお開きとなり、みなさんと記念写真を撮ってお別れいたしました。
39回公演
愛知県岡崎市
石原邸
この朗読会は名古屋にありますギャラリー橋本美術のオーナー、橋本龍史さん主催で実現しました。場所は愛知県岡崎市内の江戸時代に建てられた町屋「石原邸」。この町屋は築100年経て現在岡崎の文化財に指定されています。所有者は岡崎市内で産婦人科を経営する吉村さんで、その吉村さんのご厚意で橋本さんが、岡崎に住む陶芸作家、金田恭明の作品展をこの石原邸で開催。その準備期間の一日を朗読に当ててくださったと言う訳です。
「石原邸」は100年の時間を刻む趣のある佇まいで、朗読をするにはもってこいの空間でした。玄関を入った最も奥の部屋を朗読の部屋としました。その部屋は奥行きのある庭に隣接していて、雨戸を閉めて暗転とするか、その庭を借景として利用するかと悩み、結果、庭を朗読空間に利用することとしました。
庭を背にし、縁側に朗読のイスを置きました。7時40分に最後の36人目を迎えスタート。観客の後ろより暗転の後、朗読を開始しました。打ち合わせでは暗転の中、部屋の端を通ってイスにたどり着くようになっていたのですが、スタッフがイスの前を通れるようにしてしまい、最もいい場所が朗読の最中空いていると言うことになってしまいました。
朗読の間、頭上を飛行機が飛び、屋敷の横を車が通り、ご丁寧に救急車までにぎやかしをやってくれました。とは言っても今回の観客のみなさんは40分の間微動だにせず、集中されているように見受けられました。その心持ちを受け、ラストはお得意のライトアップ。これこそ最高と思われるもので、庭の木に明かりが入り、石灯籠が浮かび上がり、さらにあらかじめ仕込んでおいた金田さんの赤銅色の陶器が異彩を放っていました。私はその最高の場に縁側から足を踏み入れ、庭の奥へと姿を消しました。
このライトアップが見事に観客の心を揺さぶったようで、終了後の感想では異口同音に「朗読も素晴らしかったが、庭がすばらしかった」と、この言葉が飛び交かいました。
今回のことでいかに朗読を支えるシチュエーションが大事であるかを思い知らされました。
朗読をする前から空間の雰囲気に、みなさんがインスパイヤーされ、その相乗効果で朗読が心に響いたわけです。そのせいで観客のみなさんは身動きをされなかったのだと思います。
観客は36人、その内男性は5人、その中の一人が屋敷の持ち主の吉村さん。その吉村さんが感想として、「私は産婦人科の医師で、この所思うことは、最近のお産は死んでいる、生むという行為が自然と呼応していないと思う、森もそうで木を植えると言う行為が何のために有るのかと言うことをもっと考えるべきだ。そう考えると、この作品の主人公は自然としっかり呼吸し、自然と対話しながら木を植えたと思う、本当にいい朗読だった」と語ってくれました。その吉村さんから10月〜11月に吉村さんの病院にあるホールでやってほしいと後日連絡がありました。
このように江戸時代の残り香の中で開かれた朗読は、多くの方に感動を与えたようです。何だかすごいことをやっているようですが、これは作品と空間の勝利だと思います。この空間に出会えたことを感謝したいと思いました。